WindowsXPの代わりとしてUbuntu+MicrosoftOfficeを実業務に使えるか?

WindowsXPのサポートが終了したからといって、会社や団体は資金繰りの都合もあり単純に全てのマシンの買い換えやOSアップグレードができている状態とは限らないと思います。(もちろんセキュリティリスクを考えるとどんな状況であろうと買い替えるべきですが…)

例えばインターネットに接続する必要があまりない部署のWindowsXPマシンは買い替え対象とせず、ネット接続禁止の状態で継続使用という風な対応もとられているかもしれません。

今回はこのようなケースの対処方法としてLinuxディスビューション「Ubuntu」への乗り換えを考えた場合、実業務可能レベルの仕上がりになるか?というのが気になって試してみたので、その時のメモを残します。

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photo credit: mkrigsman via photopin cc

ちなみにここでいう「実業務可能レベル」とは、一般事務に必要と思われるインターネットの使用、MicorosoftOfficeの使用(Word・Excel・パワポ…)が可能なレベルとしています。

エンジニアにとってはLinuxはむしろ楽しい環境だと思うので、今回はその辺向けではなくて一般向けの検証です。

サマリー

1.なぜUbuntuか?
2.Ubuntuのダウンロードとインストール
3.UbuntuでMicrosoftOfficeを使う
4.噂にきいていた日本語入力の問題
5.結果、業務に使えるか?

 
 

1.なぜUbuntuか?

Ubuntu(ウブントゥ)とは、Linuxディストリビューションの一つです。
Linuxはいわゆるオープンソースソフトウエアで、無償で提供されているOSです。
基本的な話はこのへんに詳しく書かれています。

Ubuntuとは | Ubuntu Japanese Team
Ubuntu – Wikipedia

なぜ数あるLinuxディストリビューションの中でUbuntuを選択するかというと、Linuxの中でも人気が高いからです。
人気が高いということは、以下のような恩恵を受けることができます。

  • 困ったエラーに遭遇したときにネットから得られる情報が多い
  • コミュニティも活発であるため不具合も改善されており、比較的安定している
  • 仮に不具合やセキュリティホールが発見されたときの対応が早い

ここではサポートが2017年4月までである12.04 LTS(Long Term Support)版を使用します。

2.Ubuntuのダウンロードとインストール

(1)以下からisoをダウンロードします。UbuntuはCDに焼けるサイズ(700MB程度)のisoが用意されています。

Ubuntu Desktop 日本語 Remixのダウンロード | Ubuntu Japanese Team

ここでは「ubuntu-ja-12.04-desktop-i386.iso」をダウンロードして検証をします。

(2)ダウンロードしたisoからLiveCD(兼インストーラ)、LiveUSBメモリ(兼インストーラ)を作成する。

UbuntuはLiveCDで起動して試用することが可能です。試用してみて「使える」と思った段階で本格インストールもできます。

何故CD版とUSB版の2種類を紹介するかというと、今は「古いマシンへのUbuntuインストール」を前提としているので、光学ドライブが壊れていたりするというシチュエーションも大いにあり得るからです。
対象マシンが大量にある場合は、LiveCD,LiveUSBメモリをそれぞれ数個ずつ用意して、数台ずつ併行してインストール作業を進めることで作業の大幅な効率化が図れます。なのでインストール媒体準備も大切なステップの一つです。

■LiveCD(兼インストーラ)の作成
CDに焼く場合は、言うまでもないことですが「きちんとisoイメージとして焼く」ということだけ注意したらいいと思います。(自分が一回間違ってふつうにデータとして焼いてしまったため…)

「DvdDecrypter」で言うと、メニュー「mode」⇒「iso」⇒「write」を選択
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DVD Decrypter Free Download and Reviews – Fileforum

■LiveUSBメモリ(兼インストーラ)の作成
「UNetbootin」などのソフトを使うと、USBメモリへisoイメージを焼くことができます。
これはインストール不要で、exeを起動するだけで使用できる便利ツールです。

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ダウンロードファイル一覧 – UNetbootin, Universal Netboot Installer – OSDN

(3)インストール

詳しいインストール手順はこのへんを参照。所要時間は、環境にもよりますが約10分程度です。
Ubuntu 12.04 Desktop 日本語 Remix のインストール

デュアルブート/クリーンインストールが選べますが、ここでは「もうWindowsXPとはお別れ」という前提なので、思い切ってクリーンインストールをします。

インストール完了直後。
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インストール後、パッケージを最新にするためにターミナルから以下を実行しておくとよいです。
所要時間は環境にもよりますが約30〜40分程度。

sudo apt-get update
sudo apt-get upgrade

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OSの環境が整ったところで、いよいよMicrosoftOfficeをインストールします。

3.UbuntuでMicrosoftOfficeを使う

まず背景的なお話ですが、Ubuntu(やその他Linuxディストリビュージョン)には、MicrosoftOfficeと似たような機能を持つLibreOffice(リブレオフィス)という文書作成ソフト群が標準で搭載されています(または無償でダウンロードできます)。

LibreOfficeはMicrosoftOfficeとほぼ同等のソフトを提供していますが(ワード⇒LibreOffice Writer、エクセル⇒LibreOffice Calc、パワポ⇒LibreOffice Impress)、残念なことに互換性の面で課題が残っており、社内全体がWindows+MicrosoftOffice環境という中で一部のみUbuntu+LibreOfficeという環境は今のところ使えそうにありません。

そこで「Ubuntu+MicrosoftOfficeを使う」という選択肢が浮かび上がってきます。

(1)Ubuntu上でWindowsアプリケーションを動作させる「Wine」

Ubuntu上でWindows用アプリケーションを動作させるためのソフト「Wine」というものがあります。
「Wine」はPCをエミュレートするのではなく、Windowsアプリケーションが利用するWindows APIやWindowsアプリケーションが呼び出すDLLをLinux上に実装することで、Windowsアプリケーションを動作させるというものです。(Wine is not Emuraterから「Wine」)

Wine単体のインストールは、ターミナルで下記のコマンドをたたくことでできますが、ここではしません。

sudo apt-get install wine

Wine単体からMicrosoftOfficeをインストールすることも可能ですが、実はこの方法だとエラーが出るという情報があるため、その代わりにPlayOnLinux経由でインストールする方針をとることにします。PlayOnLinuxはWineも含有しているので、こちらをいきなりインストールします。

(2)Linux上でWindowsアプリケーションを動作させる「PlayOnLinux」

ターミナルで以下のコマンドをたたくとPlayOnLinuxをインストールできます。

sudo apt-get install playonlinux

PlayOnLinuxのインストール途中で下記メッセージが出ると思います。

ubuntu ttf mscorefonts installer を設定しています

インストールの進捗も止まり、特にOKボタンも何も表示されませんが、これを×で閉じたらインストールは完了しませんので注意してください(こんなところでハマって結構な時間を費やしました)。キーボードの矢印キーを押すと「了解」を選択できるようになるので、「了解」を選択するとインストールの続きが再開されます。

(3)PlayOnLinuxでMicrosoftOfficeをインストール

インストールされたPlayOnLinuxを起動し、メニューより「オフィス」を選択すると、以下のようにインストールできるMicrosoftOfficeの一覧が出てきます。

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MicrosoftOfficeのCDを光学ドライブにセット後、そのバージョンに見合ったものを一覧から選択し、「インストール」をクリックすると、インストールが開始されます。プロダクトキーも用意しておきましょう。

(4)Officeを使う

インストールされたOfficeを起動してみます。
Windows上で見る姿となんら変わらない姿で起動し、終了させることができることに一瞬感動することと思います。ふつうに会社全体Windowsの呪縛から逃れて、Linuxに移行できるのでは?などと夢が広がる瞬間だと思います。

日本語入力を試してみるまでは、の話です。

4.噂にきいていた日本語入力の問題

実は「PlayOnLinuxでMicrosoftOfficeを動かすとだいたいは動作するが日本語入力がおかしい」というのは結構ネット上に転がっている話題です。

具体的にどうおかしいかというと、以下のようなところ。

  • 変換時の動作が不安定(入力したはずの文字が消えたりする)
  • インライン変換ができない。変換候補が下のほうに出る(昔のワープロ風)

試してみると、確かにそのような動き。

そしてネットに転がっている解決策をまとめると以下のようなところです。

  • レジストリエディタを起動し、HKEY_CURRENT_USER→Software→Wine→X11 Driverの「inputStyle」を「OnTheSpot」にしてみる、「OffTheSpot」にしてみる、「root」にしてみる
  • レジストリエディタで上記の「X11 Driver」以降がない場合は自分で作る。

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ちなみにinputStyleをOnTheSpotやOffTheSpotやrootなど変えてみるという改善策は、まったく候補が表示されなかったりするものを改善させるための策であり、変換候補が遠く離れた下の方にでる現象は改善しません。現状Ubuntu+microsoftofficeでは何をやってもインライン変換を実現することはできません。

5.結果、業務に使えるか?

ネットを検索して出てくる声は「PlayOnLinux経由で使用するとMicrosoftOfficeはほぼ問題なく動く(インライン変換はできないけど)」と、少し肯定的な感じの声が多かったりします。

ですが実際使ってみたところ、とてもうちの会社の事務の人たちにコレは強要できないなーというのが正直な感想です。

「テキストエディタとネット環境があれば何とか仕事にはなる」という情シス部門とは違い、Excel・Wordがメシの種である事務部門にとってはかなり大きな問題でしょう。情シス部門に苦情殺到です。

実はわたしも、日本語変換問題がクリアできたらもっと踏み込んだ検証(現状Windowsで使用しているIPプリンタの設定、LAN上の共有フォルダ使用、その他Windows向けソフトの使用など)も試して、実際自分の職場に導入したいと考えていたのですが、インライン変換が実現できないことは予想以上に大き過ぎる問題でした。故にUbuntuへの乗り換え案はここでストップです。

さらに「Ubuntuは予想以上に重かった」というのも大きな気づきの一つです。
WindowsVistaあたりがふつうに動くマシンにLinux乗せたらサクサク動くんだろうなという幻想のもと、実際Vista搭載マシンで上記を試していましたが実際は全くそんなことはありませんでした。

ということで、次回は「軽いし人気も高い」といわれるLinuxMintでいろいろ試したいと思います。

ふつうのLinuxプログラミング Linuxの仕組みから学べるgccプログラミングの王道

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